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電気通信大学 大学院情報理工学研究科 情報・ネットワーク工学専攻 小野研究室

  • マイクロ波帯マルチプレクサの研究
    • 集中定数型LPF-HPFダイプレクサに関する研究

     無線技術の多様化によりアプリケーションが増加し、無線通信機器において2つ以上の周波数に分波するマルチプレクサがより重要な回路となっており, 多様なアプリケーションに対応可能なマルチプレクサが必要とされています。また,携帯電話等の無線端末への使用から小型化の需要が高まっていることに加え,低挿入損失及び低反射損失を確保する必要があります. 近年は無線通信信号としてアナログ信号ではなく、ディジタル信号を取り扱うことが多く、0/1データの誤り率を示すBit Error Rate(BER) の改善等のために阻止域において十分な減衰量をとる必要があります。
     2.4 GHz帯のBuletooth, 5 GHz帯の無線LANをモチーフとし、2.4 GHz側をLPFで、5 GHz側をHPFで分波し、それぞれの出力端子間のアイソレーション特性が良好な回路を実現しました。良好なアイソレーション特性の実現にはLPF、HPFを構成するインダクタやキャパシタを多段化し、通過域から遮断域の遷移の傾きを急峻とする必要がありますが、多段化すると回路サイズが大きくなる問題があります。そこで、高周波回路に限らず、回路の設計では一般的な集中定数チップ素子を用いてLPF、HPFを小型化しました。集中定数チップ素子でLPF、HPFを構成する際の難しい点は、チップ素子の素子値にばらつきがあること、動作周波数が低いときには問題とならなかった、寄生素子の影響が大きくなるため、回路設計の初期段階で寄生素子を考慮した設計としたり、チップ素子を実装するパターンの設計を工夫したり、試作の際には寄生素子の影響を最小限とするためにはんだ付けをきれいに行うことが必要となります。各種工夫を加え、最終的にはLPF、HPFのカットオフ周波数がほぼ電磁界シミュレーションと一致し、アイソレーション特性が46 dB程度確保できるダイプレクサが実現できました。

    出典:Shohei Sakai, Satoshi Ono, and Koji Wada, "High Isolation Characteristics between Two Channels using LPF-HPF Diplexer Composed of Chip and Pattern Elements," Transactions of The Japan Institute of Electronics Packaging, Vol.13 Pages E19-019-1-E19-019-10 2020.

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